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 私が目覚めた場所は『回生の祠』という特別な場所らしい。ぐるりと見回してみたけれど、うん。何か文明が発展してます!という感じ。
 あのオレンジ色に光る壁、どうなってるんだろ。キョロキョロしていると、目が覚めた時に最初に会った人が「こっちだよ、ナマエさん」と声をかけてきた。誰かはわからないけど、とりあえず悪い人ではなさそうなので、素直に彼の元まで行く。目覚めて最初に「誰?」と聞いた時の彼の反応が何だか可哀想過ぎて、それ以上はすぐには聞けなかった……でも、名前がわからないのは色々不便だなぁ……。彼は何故か私の名前を知っているっぽいけど、私は私の名前もよくわからないから、あんまりしっくりこない。

「あの……」
「何? ナマエさん」
「その……えーっと……それって私のことですか?」
「え?」
「その、『ナマエ』って私のことを呼んでますよね」
「……」
「あれ? 違います?」
「……」
「もしもーし? 聞いてますか?」
「……ご、ごめん。そう。貴女の名前だよ」
「そうですか。わかりました。教えてくれてありがとうございます。ところで、貴方の名前も教えてもらえませんか?」
「俺は……リンク」
「リンク……リンクさんですね。よろしくお願いします」
「! ……いや、『リンクさん』じゃなくて、『リンクくん』って呼んでもらってもいい? ……ナマエさんにはそう呼ばれてたから」
「そうですか。わかりました。リンクくん」
「うん。ナマエさん」

 言われたまま素直に呼ぶと、嬉しそうに、愛おしそうな目で見られた。
 一体この美形と私の関係は何なんだろう。
 考えようとすると、頭の中がもやーっとする。

「大丈夫? どこか痛い?」
「いえ……痛くはないんですが、何だか頭の中がもやーっとしていて……。あの、もう一つ教えてもらって良いですか?」
「うん。俺に答えられることなら」
「リンクくんは、私とどういう関係ですか?」
「……恋人だよ」
「こ……恋人? ……冗談ですよね?」
「冗談なんかじゃないよ、本当!」
「えぇ……私を騙そうとしてませんか? 貴方のような美形が私の恋人?」
「ナマエさん……お願いだから俺のこと否定しないで。俺、ずっと……ナマエさんのこと……」

 びっくりして疑ったらリンクくんが泣いてしまった。
 さっき目を覚ました時にもぼろぼろ泣かれてしまったけれど、涙腺弱いのかなぁ?

「ご、ごめんなさい。ちょっとにわかには信じがたくて……リンクくん、とても綺麗な顔してるから……恋人だったと言われて動揺しちゃって」
「ナマエさんの方が綺麗だよ。俺、出会った時からナマエさんのこと綺麗な人だなって思ってた。綺麗で可愛くて、愛しくて、ナマエさんの全部が欲しいって。だから恋人になって、ナマエさんの全部もらって凄く嬉しかった。もう手放せない」
「は、はぁ……」

 リンクくんの発言に、顔に熱が集まるのがわかる。な、んか……ベタ惚れじゃないか? 大丈夫? 本当に? ってか、全部もらったって……まさか、そういうこと? この美形と私が?

「……思い出してもらう」
「え……?」
「絶対に、元の時代に戻って思い出してもらうからね」

 決意を込めた目でがしっと手を握られ、空色の瞳で真っ直ぐ射抜かれた。
 それより『元の時代』って何?
 ……また新しい『?』が……

「とにかく今はハイラル城へ向かおう。テラコなら……俺たちをきっと元の時代に戻せるはず。ゼルダ姫たちがパーツを全部集められているといいけど……」
「ハイラル城? ゼルダ姫? テラコ……?」
「(ハイラル城もゼルダ姫も忘れてしまったのか)テラコっていう『時を渡るガーディアン』って呼ばれてるタマゴ型ガーディアンがいるんだ。多分、それの力でナマエさんも俺もこの時代……世界線に来た。俺たちは元々、百年後の未来で出会ったんだよ」
「はぁ……そうなんですか……」
「そのあたりのこと含めて、ナマエさんは俺の知らないこともたくさん知ってたんだけど。今、何か自分や周りのことでわかることはある?」
「……いいえ……わからないことがわからないです」
「そうか。うん。じゃぁ、少しずつだね。俺のことも、初対面……ってことになっちゃう?」
「そう……ですね。ごめんなさい」
「いいよ。謝らないで。俺も……記憶を失ってたことがあるから」
「そうなんですか?」
「そう。まさしくこの『回生の祠』でね。だけど、きっと大丈夫だ。二人で旅した場所をまわったら、きっと思い出せるから」
「はぁ……」

 言われていることはよくわからないけど、まぁ……いいか。
 話ながら階段を登っていくと、出口についた。
 外の眩しさに思わず目を細める。
 そのまま真っ直ぐ進むと、ぱっと視界が開けた。

「うわぁ……」

 息を呑む雄大な自然の美しさ。
 崖下から吹き上げる風が身体全体を吹き抜けていくようだった。

「少し前まで……ここは戦場だったんだ。でも今は違う。平和になったんだよ」
「はぁ」
「一応、ゼルダ姫に会う前に今の状況を伝えておくよ。俺たちがどうしてここにいるのか、ナマエさんの状況が今どうなっているのか」
「はい。よろしくお願いします」

 ぺこりっと頭を下げると、リンクくんに何故だか苦笑された。

「ナマエさん、一つお願いがあるんだけど」
「はい? なんでしょうか」
「その……もう少し砕けた話し方で話してもらってもいい? ちょっと……距離を感じるから」
「私にとっては初対面なのですが……ゔ……わかりました。わかりましたって、わかったってば! そんな捨てられたワンコみたいな目で見ないで!」
「うん。そうそうそんな感じで。改めてよろしくね。ナマエさん」
「ん……よろしく……」

 差し出された手に応えて握手する。
 あ。やっぱりこの感触はどこか懐かしいかも……。

「ナマエさん?」
「あ、いや……何でもない」

 何となく気まずくなって手を離す。

「それじゃぁ行こうか」
「うん」

 目指すはハイラル城……というところらしい。
 そこそこ距離があるらしいので、道中で色々と教えてもらえることになった。
 今のところ全然困ってないのだけど……。
 とりあえずお腹すいたなぁ。