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 ついにこの時が来た。
 厄災ガノンを倒すため、ハイラルの全ての人々が一致団結してハイラル城の奪還、そして厄災封印に臨む時が。ゼルダ姫の力強い号令の元、この地に集った人達が鬨の声をあげて魔物たちに立ち向かっていく。

 私とリンクくんは露払いを買って出た。

 相変わらずのツーマンセルでハイラル平原を真っ直ぐに城に向かって進んでいく。
 後続のゼルダ姫たちの動きを確認しながら、つかず離れずの距離で切り込んでいく。実はこの後、あらかた強敵を倒した時点で赤い月が昇る。リンクくんにそのことを話したら、かつての私の赤い月の刻のことを思い出したのか、ひどく心配されて拠点に残った方がいいんじゃないかと言われたけれど、身体も、魂も世界に馴染めたからなのか、ブレワイの世界で体感したようなことはこれまでのところは無かったと伝えたらほっとしてた。戦場であんなことになったら、戦えないし。それに、皆が戦いで昂ってるからなのか、違う意味でも危ないと言われた。

「ナマエさん、行けるね?」
「うん。まだまだ大丈夫だよ!」

 リンクくんの声に応えながら、矢を放つ。真っ直ぐに飛んだ矢は放った瞬間に五つに分かれ、そこにいた数体のモリブリンたちを消滅させた。リーバルくんにもらった五連弓スゴイ……。どうなってんだろうこの仕組み……。

「ナマエ、息吹の勇者! 無理はしないでくださいね!」
「突っ込み過ぎてはダメですよー!」
「了解です。ゼルダ姫、インパさんも!」
「承知いたしました」

 そうそう。リンクくんはここでは『息吹の勇者』と呼ばれている。私は『リンクくん』と『リンクさん』で呼び分けをしているけれど、普段、名前だけで呼んでいる皆はまぁ最初の頃は混乱してた。リンクくんは意識して遠巻きにしていたけれど……。全く関わらないわけではなかったから。
 そんなリンクくんは、世界線は違えどゼルダ姫に対してはきちんと接してる。百年後のゼルダ姫が経験したことに思うところはあるだろうけど……。

「勇者らしいところを見せてもらうよ! ナマエも、僕の弟子になったからには恥ずかしくない戦いをしてもらうからね」
「リーバルくん! わかってますよー!」
「ナマエさんとリーバルって仲良いよね……」
「今それ気にするところ?」
「英傑様の弟子……負けてはいられませんね!」
「テバさんのやる気が上がった……!」

 リト族の二人が急上昇して空から城の方へ向かっていく。二人以外にも空の敵はリト族の皆が片付けてくれる。あっという間に空高くまで舞い上がった二人が、点在する小隊の救援がてらバクダン矢で魔物たちを一掃して行くのが見えた。
 リーバルくん……もの凄く気合い入ってるね。
 テバさんもなかなか喧嘩早いから、全力で敵に迎えることに昂ってるみたいだ。

「俺たちも負けてられねぇな! いくぜ、ユン坊!」
「了解だゴロ! 頑張るゴロ!」
「ダルケルさん、お願いします! そっち、白銀が向かってます!」
「任せときな!」

 ゴロン族の二人はいっそう力強く雄叫びをあげると、身体を丸めて敵の群れに突っ込んでいった。うわーぁ……痛そう……。ハイラル平原を舞台としたリアルボーリング。痛いじゃ済まず、次々と魔物たちが消滅していく。

「私たちも負けていられないね。シド、行くよ! ナマエ、もしも怪我してしまったらすぐに言ってね! 無理しちゃダメだよ。息吹の勇者さんも」
「ありがとう、ミファー姫! ミファー姫も気をつけて!」
「ありがとう、ミファー。シド、絶対守れよ」
「もちろんだゾ! リンク、君も気をつけて行くんだ! 戦いが終わったら、ゆっくり話をしよう! 約束だゾ!」
「ああ。約束する」

 ミファー姫とシド、姉弟が連携して戦っている姿をこうして実際に見るとぐっと来る。この奇跡が、シドくんをより一層成長させてくれるのだろう。今は目の前のことを全力で。この世界のゾーラの里にいるシド王子のこうあるであろうという未来、立派に成長した姿を見て、ミファー姫自身の力にもなってるはずだ。

「それじゃぁアタシ達も気合い入れていこうか。ルージュ、準備はできてるね?」
「勿論! ウルボザ様の足手纏いにはなりません!」
「頼もしいねぇ! よし、いくよ! ナマエ、息吹の、おひいさまの露払い、頼んだよ!」
「頼まれました!」
「承知しました」

 パチンっと指を弾く音の直後、大地に雷が走る。何度見ても派手でカッコいい。
 さすがウルボザ様!

 そんなウルボザ様の傍で、パトリシアちゃんを操るルージュも、負けじと奮闘している。
 将来のゲルドは安泰だ。ルージュのような子が長なら、きっと皆で力を合わせることの大切さを伝えていけるだろう。

「未来からの勇者達よ、助太刀に感謝する! お主らに切り拓いてもらったこの道、必ずや厄災の討伐に繋がろうぞ!」
「まっ! オレ様がいれば十分だろうけどな。お前らの討ち漏らしはしーっかり片付けてやるから、どんどん進め!」
「ハイラル王、ご武運を!」
「コーガ……調子乗ってると『また』自爆するぞ……」
「ぶふっ」

 ぼそっと呟くように言ったリンクくんの言葉に思わず吹いてしまう。そうだよねー。今まさに術で呼び出してるあの鉄球で奈落まで転がってったんだもんね……百年後のコーガは。今はその横で両手剣を片手で振り回しているハイラル王に鉄球をぶっ飛ばされそうだけど。

 それぞれがそれぞれの場所で闘っている。
 この後待ち受けている、最終戦のために。

「リンクさん、ここは私たちに任せて! この先にアストルがいるはず。絶対に逃さないで!」
「お前なら余裕だよな? お前自身のために、行け!」
「ナマエさん、息吹の勇者……」

 私たちの言葉に、リンクさんが力強く頷く。退魔の光をまとったマスターソードをリンクさんが振るうたび、魔物たちが殲滅されていく。やっぱり強いわ。さすが、歴代最強と言われるだけある。
 感心していると、横から小さくため息。

「惚れちゃダメだよ? 百年前の俺でも」
「もう! リンクくんだけだって何度言わせるの! ってか、戦場でどんな軽口だよ!」
「『俺』の百年前なら大歓迎なんだけどねー」
「もう! 集中して!」

 口ではそう言うけれど、実は確実に魔物を屠っているリンクくん。流れるような動きで闘うその姿は本当に流麗だ。忍びスーツを着てると本当に忍者みたいだね…。
 そんな中、ついに赤き月の刻が来た。世界に留まり漂う魔物達の魂が肉体を取り戻す時……ガノンの魔力が最大になる時が。
 だけどね、私たちの敵じゃない。

「ちゃちゃっと片付けちゃおう!」
「りょーかい!」

 ハイラル城はもう目の前だ。