イーガ団の術により身体を動かせなくなってしまった事件から数か月後、厄災ガノンの討伐と封印から数えるとハイラルが平和になって半年が過ぎる頃、私とリンクくんは二人でアッカレ地方にあるイチカラ村に居を構え、そこを拠点にして毎日を過ごしていた。何故かって?理由は私が本格的に『プルアパッド』の開発に関わることになったから。シーカーストーンに代わる端末の開発のためシーカーストーンの分析を進めたところ、古代ハイラル語で組まれた元の世界で言ういわゆる『プログラミングコード』のようなものが確認できて、プルアに翻訳してもらいながらコードを書き出していったらコードに一定の法則が見つかり、正しくそれがシーカーストーンの機能を発現させるための『プログラム』だということがわかったのだ。試しに『プログラム』の一部を意図的にアレンジしてみたら、動作に不安定さはあるものの、意図していたような動作をさせることができてプルアと一緒に喜んだ。
正直、動力の部分に関しては『青い炎』がどう使われているのかとか、何もない空間にどうやって物を出現させているんだとか、ワープする時のあの『分解』から『構築』『定着』までの物理法則がどうなっているのかわからないけれど、色々と元の世界の常識では測れないことばかりなのだから野暮なことを考えるのは止めた。
では何故アッカレなのか。プルアパッドの開発ならハテノ村のプルアの研究所で良いんじゃないかなと最初は思ったけれど、私が一番開発のお手伝いで力を入れたい『ワープ機能』に関しては、プルアよりもロベリーとともにシーカーストーンの解析とプログラムの構築を進めた方が良いとプルアが判断したからだった。その判断をするや否やロベリーに手紙を出したプルアは、ものすごく良い笑顔でリンクくんにこう言い放った。
「ナマエをアッカレのロベリーのところまで連れて行ってくれるわよね」
お願いではなく有無を言わせない言葉だったよね、あれは。と、リンクくんが苦笑する勢いで。
そんなわけでロベリーの返事も待たずに私たちはハテノ村を出てアッカレへと向かうことになった。最初はロベリーの研究所に間借りさせてもらえるのかなーなんて思っていたけれど、リンクくんに反対された。曰く、ロベリーのところで暮らしていたらイチャイチャできないじゃないか、と。じゃあどうするの?って聞いたら、ものすごく良い笑顔で「イチカラ村に俺が買った別荘があるからそこからロベリーのところに通うようにしよう。馬で移動すれば毎日の移動もそんなに時間かからないし。村からロベリーの研究所までは俺が護衛するよ」だって。それはそれで良いんだけど……そもそもハテノ村に家のあるリンクくんが私と一緒にアッカレに行くの?と聞いたら「新婚なのに奥さんが『単身赴任』だなんて嫌だよ!」と泣かれてしまった。……婚約しただけでまだ結婚してませんが。
それに、これからどのぐらい先の未来になるのかはわからないけれど、私がリンクくんに詳しく話をしていない未来が現実のものとなった時に、単身赴任状態になるのはリンクくんの方だと思うんだよね。そんなことを心の中で思いつつ、未来のことを詳しく話すつもりは無いので黙っておいた。
「それじゃあ出発しようか。忘れ物はない?」
「うん。もともとそんなに持ち物もなかったし。リンクくんのポーチに入れてもらったもので全財産だよ。それより、家中に飾っていた花飾りまで全部ポーチにしまっちゃって……本当に全部持っていくの?」
「持っていくよ。だって全部ナマエさんが俺のために作ってくれていたものでしょ?薬やお茶として使える実用的なものが多かったから、旅の間にも役立つと思うし」
「……さすが。よくわかったね」
「三角さんのお店で働かせてもらったことで、植物を見る目が変わったからね。これまでは『ただそこにあるもの』だったけど、今は『この花をナマエさんにあげたら喜ぶかな』って目で見てる」
「っ……だから、毎日のように花を摘んできてくれるの?」
「うん。ナマエさんは何時も素直に喜んでくれるから嬉しい。それに、花の香りがあるとよく眠れるみたいだしね」
「確かによく眠れてると思う。仕事で辛かった時にリンクくんに作ってもらった花束に助けられてたからかな……。お花があると落ち着く。すっかり花のある生活がデフォルトになっちゃったな」
「ここからアッカレまでの移動途中にも色んな花を見ることができると思うよ。見て楽しむだけじゃなくて、ナマエさんの世界にあったみたいに食べられる花もあるから、料理にも使ってみようか」
「いいね、それ。大賛成!ありがとう、リンクくん」
「どういたしまして」
リンクくんの心遣いが嬉しくて笑顔でお礼を言ったら、よしよしと頭を撫でられて頬にキスされた。んんっ……私の方が年上なのに、アンチエイジングで若返ってからというものの、リンクくんが私の頭をにこにこしながらよしよししてくる頻度が以前よりも増えている気がする。お返しに私もリンクくんの蜂蜜色のふわふわの髪を触らせてもらっているけれど。
リンクくんの髪、しっかり硬そうに見えるけれど触ってみるとふわふわでまるでハイリア犬のようなんだよね。元の世界で言うならば、ゴールデンレトリバー?リンクくんが将来ゼルダ姫を探すために旅に出ることになったら、村の中にいるハイリア犬を今以上にたくさん撫でまわさせてもらおう。モフモフは正義。……おっと話が逸れちゃった。
ハテノ村からアッカレまで移動する期間は大体三週間から一カ月ぐらいになるというのがリンクくんの見立てだった。その間にどんなものに出会えるのか、どんな景色を見ることが出来るのか、ハテノ村を出発する前から楽しみで仕方がなかった。
唯一の懸念事項は、ハテノ村からアッカレまでの移動手段が馬車ではなく馬での二人乗りであったということ。馬はもちろんリンクくんの愛馬のエポナ。
「乗馬でナマエさんのお尻が痛くなったらしっかりマッサージしてあげるから安心してね!」
「も、もう!またそういうこと言う!」
「あはは」
「あははじゃないよー!もう!とにかく出発。しゅっぱーつ!」
「はーい」
実はエポナとはすっかり仲良しになっていた。
イーガ団との一件の後、動けるようになってすぐにエポナとの顔合わせを済ませていた私はどうやらエポナのお眼鏡にかなったらしく、リンクくんと二人乗りすることについて「お願いしても良いかな?」と聞いたら、エポナは「任せなさい!」と力強い鼻息で応えてくれた。何て頼もしいんだエポナ姐さん……ッ!嬉しくって御礼にもぎたてのリンゴをあげたら、私の手から食べてくれた。それでさらに嬉しくなってエポナにメロメロになってデレデレしながらブラッシングをしてあげていたら、ちょっとだけリンクくんに妬かれた。雌馬のエポナにまで嫉妬するなんて。可愛いなぁ。リンクくんは。
それだけエポナにメロメロになっていた私だけれど、いざ乗馬して旅に出るとなるとやっぱり好きなだけでどうにかなる問題じゃないと早々に痛感することになった。お尻が痛い。元の世界で乗馬の経験など皆無だったから、慣れない上下運動と鞍の硬さで、ハテノ村を出た初日からお尻の痛さに苦しむことになった。さらに言うと、弱すぎる体幹故に馬上で自分で自分の身体を支えるために必死になって全身の筋肉を使うから、全身筋肉痛になるというオマケ付き。情けない。情けなさすぎるよ、私!それではいけない!とアッカレまでの移動の途中、リンクくんには本格的に武器の取り扱いについての指南をお願いし、せめて一人で騎乗出来るようになるぐらいの筋肉をつけようと鍛錬することにした。元の世界でザ・運動不足の道のど真ん中を歩いていた私が、である。あの社畜人生を生きていた頃の自分からはとても想像できない。
初日は、乗馬と鍛錬による全身筋肉痛で動けなくなるという非常に情けない姿をリンクくんに晒してしまった私だったけど、それも旅を進めつつ毎日筋トレや護身用の短刀を扱うための鍛錬を続けているうちに、少しずつ……少しずつだけど、筋肉がついて動けるようになってきたように思える。そのことをリンクくんに話したら「じゃぁ、確かめてみようか」ってにっこりと含みたっぷりの笑顔を向けられて、旅の途中に立ち寄ったカカリコ村での夜に嫌と言うほど体力を試された。本当にもうッ!いくら宿の離れを貸切にして泊まっていたとは言え、声を我慢するのが大変だった。しのび薬は動作音を抑えられても、声は抑えられないんだよ!
それでも……求められるのを嬉しいと思ってしまうから、結局私も欲しがってしまったんだけど。
カカリコ村を出た後は『花の中州』にも立ち寄った。中州の中央にあったはずの祠は他の地域と同様にその姿を消していて、祠を取り囲むようにして植えられた花はゲーム画面で見ていたよりもより生き生きと瑞々しくその姿を風に揺らしていた。私の元の世界にあった花に似ているものもあれば、見たことの無いようなものもたくさんあって、見ているだけで楽しかった。
リンクくんはその場にいたハイリア人の女性、確か……オコバさん?だったかな。に交渉して花束を作るに足りるだけの花を摘む許可を得ることができたらしい。私がのんびりとお花の鑑賞を楽しんでいる間にそれなりの大きさの花束が作れるぐらいの花を選んで花束を作っていた。ハイラルに来て以降、リンクくんがかつて三角さんのお店でやっていたように花束を作るところを見れることはなかったけれど、久しぶりにリンクくんが作ってくれた花束もすごく素敵で、幸せな気分になった。
リンクくんってやっぱり器用だなって思う。私も自分で調べたりリンクくんに教えてもらったりしながら色んな花飾りやドライフラワーの花束を作っていたけれどリンクくんには敵わない。アッカレに行っても時々花束を作ってほしいなと話したら、ちょっと照れくさそうにはにかみながら「もちろんいいよ」って快諾してくれた。本当の意味で平和になる時が来たら、三角さんご夫婦のように花屋と喫茶店……というか、料理屋をやってみるのも良いかもしれないな、なんて思った。
花の中州を出てからは街道沿いに北へ北へと進み、湿原の馬宿で三泊した。初めてまともに見た馬宿はゲーム画面で見ていたよりも迫力があって、布と木で作られた宿が移動を前提とした造りになっているのが興味深かった。
これから先、アッカレにある馬宿まではずっと野宿になるから、しっかり休んでおこうというのがリンクくんからの言葉。旅慣れている人の言うことは素直に聞いておくに限る。だから素直にゆっくり休んでいたのだけれど、リンクくんは馬宿の人から色々とお手伝いを頼まれたり近場の魔物を追い払ったりとずっと忙しくしていた。それでもケロッとっとした顔で全く疲れていないんだから吃驚するよね。さすがハイラルの勇者……。馬宿を発つ時には馬宿のご主人から「リンク様、是非また寄ってくださいね!」と何度も声をかけられていた。リンク『様』かぁ……と思ってリンクくんの顔を見たら、私が何を考えているのか察したのか「『様』付けされるなんて大層なものじゃないんだけどね」って少しだけ苦笑してた。
私としてはリンクくんがこれからのハイラルでゼルダ姫の護衛として各地を巡っていく間に、徐々に『厄災ガノン』を倒した『英雄』『ハイラルの勇者』『ゼルダ姫の騎士』としてリンクくんの知名度が上がっていくだろう未来がゲームと同じようにいつかやってくるんだろうなと思っていたから、その苦笑には曖昧な笑顔しか返せなかったけれど、これだけは伝えておいた。「私にとってのリンクくんは、可愛いくて格好良い、ただの男の子の『リンクくん』だよ。大好き」って。その言葉と一緒にリンクくんの頬にキスしたら、一瞬だけ泣きそうな瞳になったけれど、その後はずっとご機嫌だった。そしてその日の晩も食べられた。
そんな感じでのんびり進んでいたら、イチカラ村に到着する頃にはハテノ村を出てから一ヶ月が過ぎていた。イチカラ村はゲームで見ていたよりもずっと規模が大きくて、建物の数も多かった。その中の一つ、青を基調とした四角いプレビルドの『ユニット』を組み合わせるエノキダ工務店の独自工法で作られた建物がリンクくんが購入していたという別荘だった。中に入ってみれば、木の温かみを感じられるエノキダ工務店ならではの内装で、リンクくんからは「ハテノ村でナマエさんがやっていたみたいにたくさんのリースとかドライフラワーを飾ったら楽しそうだね」ってにこにこしながら言われた。そんな風に言われてしまったら、頑張るしかないよね!
旅の間の荷物も含め、持ち物はほとんどリンクくんがポーチに入れてくれていた状態での移動だったから荷ほどきの必要もなく、別荘の中に風を通すために窓をあけたり、軽く掃除したり、寝床を整えたりするぐらいですぐに生活をするための準備が整った。その後は一通り村の中を回って引っ越しの挨拶をして……その度にリンクくんが私のことを「俺の婚約者です」って紹介してくれたのが嬉しくて頬がゆるみっぱなしだった。
そうして、私とリンクくんのイチカラ村での生活がスタートしたのだ。
今ではもう、すっかりここが最初から『ホーム』であったかのように村に馴染むことが出来ている。馬にも一人で乗れるようになったし、赤ボコ一体だったら一人で撃退できるようにもなった。動きの素早い狼は一人じゃ対処できないから基本的には逃げの一手だけど、リンクくんからは「流鏑馬も練習すればできるようになると思うよ」と言ってもらえたので、短刀の取り扱いだけじゃなくて弓の練習もするようになった。今では、静止しているものであればかなりの確率で狙い通りに射落とすことが出来る。凄いぞ私!ドヤァっとした顔を見せる度にリンクくんがよしよししてくれるから、すっかり調子に乗ってしまっているよ。肉体の若返りとともに精神も若返っている気がする……。
そうそう、一人で馬に乗ってロベリーの研究所まで往復できるようになってからは、リンクくんにはゼルダ姫の護衛が必要な時には私のことを気にせず出かけてもらっている。私のことを優先してずっと私の傍にいてくれていたリンクくんだけど、定期的にハテノ村のプルアやカカリコ村のインパに鷹を飛ばしたり、逆に二人から手紙を受け取ったりして、ゼルダ姫がハイラル各地を巡って本格的な復興に向けての方向性を模索しているものの、王国を復活させることが果たして今のハイラルにとって正しいのか悩んでいると二人からの手紙で知ったらしく、そのことを気にしていた。
だから、背中を押した。私はもう大丈夫だから、リンクくんの思うまま行動して良いよ、ゼルダ姫の護衛のために出かけて行っても構わないよ。ゼルダ姫が目指すものを実現するには、きっとリンクくんの存在が助けになるはずだから、リンクくんの思うままに動いて良いよって。私はイチカラ村でリンクくんの帰りを待ってるからって。そうしたらぎゅっと強く抱きしめられて「ありがとう、ナマエさん。……ごめんね」と言われた。……やっぱり、ずっと気になってたよね。でも『ごめんね』はいらないよ。私は、そういうところも含めてリンクくんが好きなんだから。大丈夫、会えないなら会えないで私は私に出来ることをしようって今の私はちゃんと思えるから。
そうしてリンクくんが度々村を空けるようになった。……のだけど、何故かリンクくんは長くても五日ぐらいしか家を空けたことがない。
大体平均三日ぐらいで帰ってくる。
ワープ機能を使えないはずなのに何でそんなに早く帰ってこれるの?と思っていたら、エポナに頑張ってもらうのはもちろんのこと、高い所があればパラセールで一気に飛んでショートカットしてるんだって。リンクくんだからこそ出来る荒技だよね……。
そんな感じで今日も今日とて三日ぶりにイチカラ村に戻ってきたリンクくん。今日はお土産にと「しのび草」を中心に青系統と白系統のお花でまとめた花束を持って帰ってきてくれた。それを手に持ったまま、ぎゅーっと私を抱きしめてくれるリンクくん。お帰りの度にリンクくんがくれるこの抱擁がたまらなく嬉しい。
「ただいま、ナマエさん」
「おかえりリンクくん。思ったよりも早かったね」
「うん。ナマエさんに早く会いたかったから、雷獣山の北側からパラセールで直接飛んできた」
「……相変わらずのスタミナだね」
「毎日鍛えてるからね」
にこっと笑って軽く頬にキスをくれるリンクくん。そのリンクくんの身体を私からもぎゅっと抱き締めて久しぶりのリンクくんの蜂蜜色の髪が流れる首筋に顔を埋めたら、耳元で「はは!甘えん坊のナマエさん、可愛い!」と笑われた。いいの、甘えん坊で。こうやって甘えさせてくれるから、リンクくんがゼルダ姫の旅の護衛のために家を空けることがあっても、私は私で頑張れるんだから。
「ところでナマエさん、プルアパッドの開発の方は何か進展があった?」
「あー……うん。まぁ、そうだね。プルアとロベリーさんの間でまたひと悶着あったけど、シーカーストーンに組み込まれていたプログラム自体の解析は大分進んだから、近々プルアパッドへのプログラムの移植作業に入れそうだよ」
「そっか。……プログラムって、やっぱりナマエさんが元の世界で扱っていたものと同じように動いてるの?」
「うん。構造がおおむね同じみたいだからね。使っているプログラム言語が違うから全部一緒ってわけにはいかないけれど、ロベリーさんとプルアの二人が私にもわかるようにハイリア文字に直してくれるから、私はそれをもとにプログラムの構築を手伝ってる感じ。……まさか、ハイラルに来てから社畜時代に培ったプログラミングスキルが役に立つとはね。未だに信じられないよ……」
「はは。それ、最初にプルアパッドの開発研究をしないかって誘われた時から言ってるよね。……それで、ナマエさん」
「ん?」
「……あんまり寝てないでしょ」
「え、えっと……何のことかな?」
「誤魔化しても駄目だよ。ほら、ここの目元のところうっすら隈が出来てる!元の世界の時みたいに仕事に忙殺されてメンタルやられてた時程じゃないから『眠れない』んじゃなくて『寝てない』んだよね?誰だっけ?もう若くないから無理しないって言ってた人は」
「…………ワタシデース。でも、幸か不幸か『アンチエイジング』で二十代前半ぐらいまで若返ったら何か結構無理が効くというか、出来るところまではやりたいという気持ちが溢れて仕方ないというか、何というか……ね?」
「こら。『ね?』じゃないよ。可愛いな。って、そうじゃなくて!お互いに約束したでしょ。無理はしないでよく眠ろうって。というわけで、今日から三日間は仕事なし!たっぷり俺とイチャイチャしようね!イチャイチャしたら、よく眠れるよね」
「それ、眠るというよりもどちらかというと意識落とされてるやつ……」
「眠れるよね!」
「は、はぁい……」
満面の笑みで色気たっぷりに迫ってくる肉食なリンクくんに『ノー』と言えるはずもなく、また、言う気もないから今夜のイチャイチャが決定した。リンクくんとのイチャイチャはしたいけど、何度身体を重ねても慣れない。何時もドキドキして仕方ないし、その……体力がついた分、自分の方から積極的になることも多々ありまして。
そんなことを思っていたら気恥ずかしくて仕方なくて、リンクくんにそんな私の顔を見られたくなくて顔を埋めたままにしていたら、ぽんぽんっと優しく背中を叩かれた。
「ナマエさんは可愛いなぁ」
「……リンクくんだって可愛いよ」
「俺は可愛いって言われるよりナマエさんには格好良いって言われたいんだけどな……。ほら、俺ももう二十歳を超えたわけだし。体格も結構がっちりしたと思うんだよね」
「ん。確かに。ますます格好良くなったよね」
「え、本当!?」
「何で驚くの。リンクくんが自分で格好良いって言われたいって言ったんでしょ。リンクくんは格好良いよ。そんな格好良くて可愛いリンクくんのことが私は大好きです」
「っ……」
「あれ〜?どうしたのかな。顔真っ赤だよ?」
「くっ……わかってて聞いてくるところがナマエさんだよね」
「ふふ。照れちゃって可愛い」
「ああー!また可愛いって言った!俺、ナマエさん以外に可愛いって言われたことないんだけど……」
「そう?内心思っている人はたくさんいそうだけど。でもまあ、面と向かってリンクくんに『可愛い』って言えるのもある意味、恋人の特権ってやつだと思えば気分は良いね。ふふーん。どうだ。リンクくんは私の特別なんだぞーって」
えへへ。と柄でもなく当社比百二十パーセントぐらいの惚気気分で言ったら、ぎゅうぎゅうと抱きついているリンクくんの身体がガチっと固まったのがわかった。
「リンクくん?」
大丈夫かなーって思って身体を離して顔を見上げたら、ギラギラした空色の瞳と目が合って、今度は私の方が固まってしまった。あ、スイッチ入れちゃったわ、これ。
「ナマエさん」
「な、何かな?」
「帰ってきたばかりだし汗を流したいからお風呂に入りたいんだけど、背中を流してくれる?あと、髪も洗ってほしい。ナマエさんがヘッドマッサージしてくれると気持ち良いから好きなんだよね。それから湯船にゆっくり浸かろうか。お湯に浮かべると香りが立つタイプの花びらのストックってまだあるかな?無かったら俺が摘んできた新しいやつがあるからそれを使おう。ということで今すぐお風呂に入ろうか。うん。良いアイデアだ。そうしよう。ということで、一名様をお風呂にご案内しまーす!」
にこにこしながらほとんど一息に近いぐらいの勢いで言い切ったリンクくんにしのび草の花束を渡され、それを両手に抱えた状態のままあっという間に横抱きにされお風呂場に連れて行かれる私。
「あの、せめてもらった花束を飾ってからでお願いしたいんだけど……」
「大丈夫!お風呂に入る前にポーチに入れておけば新鮮なままだから!」
「はぁい……」
これは何を言っても聞いてくれないや。このまま確実にお風呂場で食べられる。……でも、嫌じゃないから困っちゃうよね。
「それじゃ、ヘッドスパフルコースでリンクくんの旅の疲れを癒してあげましょう」
「ははっ!楽しみ!」
お互いに笑い合ってイチャイチャして、それでお互いのためにこれからも頑張っていけると良いね。どうかこんな関係が、何時までも続きますように。腕の中に抱いた花束の花の香りに包まれながら笑う私に笑顔を返してくれるリンクくん。
君の『番』になれて良かった。
このハイラルに来ることが出来て良かった。
生きる意味を見つけられて良かった。
私を見つけてくれて本当にありがとう、リンクくん。
これからも末永くよろしくね!
「眠れぬあなたに花束を」完
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2024.11.21 先行公開
2024.12.21 全話本公開完了