12 きみがひかり

 大怪我を負ったリンクだったけど、ハートの力で怪我をする前と全く変わらず元気に過ごしている。一つだけ気になっているのは、リンクが呪いを受けた右腕に薄らと残った傷跡。目立つほどではないけれど、パックリと裂けていた傷痕の大きさがわかる傷痕。それを見てしょぼんっとする私をリンクが大きな手でわしゃわしゃと撫でて、頬にキスしてくれるまでがワンセット。

 リンクは今日も優しい。
 そんなリンクが、父親になった。

「ナマエ、そこは段差があるから気をつけろ。転んだりしたら大変だからな」
「うん。ありがとうリンク。リンクが支えてくれているから大丈夫だよ」
「そうか?気分が悪くなったら直ぐに言えよ」
「大丈夫だよ。ここはとても空気が綺麗だから」

 リンクに忙しなく動く尻尾と耳が見える気がする。私たちは今、トアル村の森の泉に向かってお散歩しているところだ。酷かった悪阻がやっと落ち着いて安定期に入り、ここからは適度に運動を、ということで毎日無理のない範囲で散歩をしている。

『ナマエ、俺と結婚してくれ。一生大事にする。俺の嫁になって、俺と一緒に生きて欲しい』

 顔を真っ赤にして私にプロポーズしてくれたリンク。テルマの酒場の営業時間中に、お客さんの目の前での公開プロポーズだった。皆の前で突然だったからビックリしたけれど、『喜んで』と返したら、とても幸せそうな笑顔でぎゅっと抱きしめてくれて、その後、その場にいたお客さんたち全員にご馳走してた。四六時中にこにこして『ナマエが俺の嫁……。嫁かぁ』とデレデレしてた。

 それからしばらくして城下町からトアルの村に引っ越すことになって、テルマの酒場での仕事を辞めることになってしまったけれど、テルマさんは私がリンクと結婚することを何より喜んでくれた。
 トアル村へと出発する日の朝「何時でも帰っておいで。ナマエは私の娘みたいなもんだからね」なんて言ってもらえて、嬉しさで涙が止まらなかった。

 トアル村にはイリアちゃんとシャッドさんファミリーがいて、私の妊娠がわかった時から先輩として色々助けてもらっている。ウーリさんにも。

 妊娠・出産は命懸けだ。医療の進んでいた元の世界にいた時から、100%無事に出産できることが当たり前だと思ってなかった。生命を繋ぐということは、それだけでもう奇跡なんだ。

 だから何があっても対応できるようにと、できる限りの準備をしている。だけど何でもかんでも制限したり気をつけたりしてもかえって身体や心に負担がかかってしまうと言うことで、簡単にまとめるなら、バランスよく食べ、よく眠り、適度に運動する。これに勝るものは無いということだった。

 私の場合、悪阻が酷かった時は料理の匂いも全く受け付けず、水分しか摂れない日も多々あった。だけどリンクのあの初夏の草原を連想させる匂いは心地よくて安心できたから、特に気分がすぐれない時は、なるべくリンクに抱きしめてもらうようにしてた。人の姿だけじゃなくて、狼の姿でも。

 そうそう狼といえば、トアル村に引っ越した後、リンクが重傷を負った時にその場の魔物を殲滅した『金色の狼』……もとい、リンクが『師匠』と呼んで尊敬してやまない『時オカ』のリンクと会った。さらに、リンクが『先代』と呼ぶムジュラのリンクとも。時オカのリンクさんは何やら色々と事情通のようで、一通りの挨拶の後、底の見えない綺麗な笑顔で「息子を頼むよ」と言われた。なので「任せてください!息子さんと一生幸せに生きます!」と元気に返したら、何故かリンクが真っ赤になってしまって、その日の夜は何時も以上に丁寧に優しく愛された。

 妊娠がわかったのは、それから間も無くのことだった。トアル村に引っ越してからは、月のものがきている時以外はほぼ毎日抱かれてたから、何時かはそういう日が来ればいいなと思ってた。それはリンクも同じだったみたいで、妊娠したことを報告した時に、ぎゅっと優しく抱きしめられて、「ありがとう」と泣きながら言われた。つられて私も一緒に泣いて、泣くだけ泣いた後に可笑しくなって二人で大笑いして、凄く幸せだなって思いながら眠りについた。

 妊娠から出産まで十月十日というのは元の世界と同じらしい。子供が無事に産まれるまで、私自身も生きて出産を乗り越えられるまで、そして産まれたら産まれたである程度の年齢になるまで、何があるかはわからない。でも、どんなことがあっても、リンクと一緒に乗り越えていきたいなって思う。

「リンク」
「何だ、ナマエ?」
「……呼んでみただけ」
「そっか?相変わらず可愛いことするなぁ。なー『リンク』。お前の母さんは凄く可愛いぞー。だから可愛い母さんに会えるように元気に産まれてこいよー」
「もう。産まれてくるまで男の子か女の子かわからないんだよ?『リンク』は、男の子が産まれた時につけたい名前でしょ?男の子を期待してばかりで産まれた時に女の子で万が一がっかりするようなことあったら、一生リンクのこと許さないよ?」
「そこは心配してない。男でも女でも、無事に産まれてきてくれて、ナマエと一緒に家族になれたらいい。女の子が生まれた時の名前は……そうだな。何がいいかな?『ラトア』はどうだ?光の精霊『ラトアーヌ』から名前を貰うのは」
「『ラトア』か。良い名前だね。じゃぁ、男の子だったら『リンク』で、女の子だったら『ラトア』。考えてくれてありがとう。リンク」
「思いついたのは俺かもしれないけど、二人で決めたことだろ。ナマエも、ありがとうな」

 ちゅっと、ごく自然な流れで唇を重ねてくるリンク。大事に思っているよ、と伝わってくる優しいキス。

「これからもよろしくな!ナマエ」
「うん。これからもよろしくね。リンク」

 ずっとずっと、一緒にいようね。

The End.