10 なじむ

 リンクと身体を重ねた日から数日間、私は熱を出して寝込んでしまった。抱き潰された日の朝、リンクの腕の中で目覚めたことに安心してぽやーっとしていたけれど、幸福感だけではなくリアルに熱に浮かされていたらしい。「おはようのキスだ」なんて照れながらキザなことを言って私のおでこにキスしたリンクが、その熱さにびっくりして、裸のままクスリを買いに行こうとするぐらいに。落ち着こうよリンク……君の身体はある意味芸術品になるぐらい綺麗でかっこいいけど、せめて下半身は隠してよ。

 高熱によってふらふらする意識の中とりあえずお水が欲しいことと、服を着て欲しいことを伝え、お水を飲んだらそこで意識が途切れた。次に目が覚めた時にリンクからは「がっついて無理させ過ぎて壊してしまったかと思った。ごめんナマエ……俺、頑張って我慢、する」と、この世の終わりが来たような顔で言われたので、「我慢されると私が困る」と伝えた。そうしたら「お……俺の嫁が可愛すぎるっ……!」と悶えていたけれど、リンクにちゃんと結婚してってプロポーズされてないからね。私。

 そんなわけでリンクのベッドを占領すること丸三日。四日目の朝に目を覚ましたら、この三日間は何だったのと言うぐらい体の調子が良くなっていた。元の世界での『創作』で読んだことのあるよくある展開だとしたら、きっとこの高熱は、リンクに抱かれたことで私の魂に彼の存在が刻み込まれ、私の魂がこの世界の定着するために何かが変わっていくその過程に伴うものだったんじゃないかって思う。
 その証拠に、熱を出す前よりも身体が軽かったし、心無し、周りの空気が『馴染んでいる』気がする。目覚めもスッキリ。体力気力ともに充実。さらに、おまけ付き。

「リンク……私、何故だかわからないけどハートが出せるようになったみたい」
「ハート?」
「うん。見てて。ほら」
「!本当だ」

 両手を組んで集中すると、ふわっと目の前に現れるハート。そのハートはしばらく私の目の前でふよふよと浮かんでいたけれど、そのうち、リンクの方にすーっと移動していって、そしてリンクの身体の中に消えていった。

「すごいな。ナマエ。これ、泉の中で疲れがとれていく時と同じような感じがする」
「……え?」
「それに、ナマエの愛情を感じるな!」
「!」

 にかっとリンクに嬉しそうに笑顔を向けられて、顔が熱くなる。こういうところ、照れも何もなく本気で素直にそう思っているみたいに言うから、こっちの方が照れてしまう。

「ナマエがいてくれるなら、俺、何だって出来る気がするよ。ありがとう、ナマエ。この世界に来てくれて。俺のこと好きになってくれて」
「あぅ」
「なんだよ。照れて言葉も出ないのか?すげぇ顔真っ赤。真っ赤になってるナマエ、林檎みたいで可愛いな!」
「はわわ……!も、リンク、ちょっと黙ってて!」
「はは!じゃぁさ」

 ちゅ

「こうしたら喋れないもんな」
「ふ、不意打ちでキスするの禁止!ドキドキして心臓がもたないっ!」
「……お前ほんと、可愛すぎる」

 あ、これスイッチ入っちゃったかもしれない。
 熱っぽい目で色気たっぷりに微笑まれて、ぎゅっと抱きしめられる。

「えーっと、リンクさん」
「なんだ、ナマエ?」
「今日はさすがにテルマさんのところに戻らないといけないかなぁって……」
「おう」
「だからその……」
「?」
「お尻触るのやめて。えっち」
「ぐっ……(「えっち」って言い方が可愛いっ)」

 私の言葉に、ぎゅっと目を瞑って渋々身体を離すリンク。離れていく温もりに寂しさを感じるけど、ずっとこのまま抱き合っているわけにもいかない。だけど、伝えることは伝えておいた方が良いかなと思って、ぐっと気合を入れてリンクを見つめる。

「ねぇリンク。私、テルマさんに借りているあの部屋を出て、城下町に部屋を借りようと思うんだ。酒場の仕事を続ければ定期的に収入が得られるし。何時までもテルマさんに甘えてばかりはいられないから」
「そっか。それならなるべく治安の良い場所を探そう。テルマの酒場で仕事をするなら……そこに近い人通りの多いところが良いかな」
「うん。それがいいかなって思ってる。ただ、いまいち城下町の状況が掴みきれてないところがあるから、部屋を探す時にリンクに色々教えてもらいたいんだけど……いい?」
「おう。もちろんいいぜ。何時探しに行くんだ?」
「早ければ早い方が良いかなと思ってる。今日、テルマさんに話をして、明日には部屋を探し始めて……すぐに見つかればすぐにでも引っ越そうかな」
「そっか。わかった。明日だな。俺はいくらでも時間の融通がきくから、ナマエの動ける時に言ってくれ。毎日、昼過ぎには酒場に顔出すようにするから」
「うん。ありがとう」

 にこっと笑ってお礼を言えば、ちょっと照れた顔になってわしゃわしゃと頭を撫でられた。何だかくすぐったくって嬉しかった。やっぱり好き。