お姫様だっこ(完結後)

「なぁリンク、お願いがあるんだが」

 ある日の夜、自室でゆっくり本を読みながらくつろいでいたら、ナマエが部屋を訪ねてきた。晴れて正式に夫婦になったものの、未だ寝室は別。理由は……寝室を一緒にしたら毎日でもナマエを抱いてしまいそうだから。だけどその理由は告げてない。もしも理由を伝えたら、ナマエのことだ。「いいぞ!遠慮なく抱け!」とあっけらかんとして言いそうで、何か癪だから。
 そんなわけでナマエとはそれぞれ別々の部屋で思い思いに過ごしているのが常なのだけれど、時々こうしてナマエが俺の部屋に来ることがある。
 ただ、開口一番が「お願い」である場合は、大抵、突拍子もないことを言い出す時だから、今回も一体何を言われるんだと内心ため息をついていた。

「……何だ?」
「『お姫様だっこ』というものをしてくれないか?」
「は?何言ってるんだ急に」

 やっぱり突拍子もないことだった。

「実はゼルダ姫にリンクとうまくやっているのか聞かれてな。それで普段のリンクとのやりとりを軽く説明したところ、はれて正式にリンクの妻という立場にはなったものの、『甘み』が足りないと言われてしまったんだ。ただ、具体的に何が『甘み』なのかわからなかったから姫に聞いたら、『手を絡める』『抱きしめる』『口付ける』『お姫様抱っこ』の辺りかと言われてね。他にもいろいろあるらしいが、教えてくれなかった。この中でまだやったことがないのは『お姫様抱っこ』というやつかと思って」
「はあ」
「私はゼルダ姫やミファー姫のように『姫』ではないから、そもそも無理だろと思っていたんだが、『お姫様抱っこ』というのはどうやらただの横抱きらしい。それで考えてみたら、確かにリンクに横抱きされたことは無いな、と。……どうだろうか?」

 ちらっとこちらの様子を上目でうかがってくるナマエ。何だその顔。可愛いな!しかも『お姫様抱っこ』を字面通り捉えていたって……他人に対してこう思うのが失礼なのは重々承知だけど……アホなのか。時々こういう勘違いをしているところがたまらなく可愛いと思ってしまう俺はナマエに相当毒されていると思う。

「どうと聞かれても……お前、やって欲しいの?」
「やって欲しいか欲しくないかと聞かれたら、やって欲しいな!どんなものなのか興味がある。ゼルダ姫が『甘み』が足りないと言って例に出すぐらいだから、その……夫婦の間にあっても良いものなのだろう?」
「まぁ……そうだな」

 少し照れながら『おねだり』するナマエに思わずニヤけそうになる。だけど次にナマエから飛び出した言葉にイラっとすることになった。

「ただ、(私が重すぎて)リンクが支えられないかもしれないけどな!」
「(俺が軟弱だと?)ふぅん……」
「え、あ……何で怒ってるだ、リンク?……ひゃっ!」

 距離を詰めたらビクッと肩を跳ねさせるナマエ。
 そんなナマエの腰を抱いて膝裏に腕を通してひょいっと抱き上げたら、腕の中でガチっと固まるナマエ。肩をぎゅっと抱き寄せてもっと密着するようにしたら、見る間に耳の先まで真っ赤になった。
 そんなナマエの反応に満足してちゅっとおでこに口付けたら、ナマエの瞳が潤んできた。やっておいて何だが……その顔は……ヤバい。

「これでも俺のこと軟弱だと思う?」
「そ、んなこと思ってないぞ!私は自分が重いから……」
「重くない。お前はもっと食べた方が良いぐらいだ」
「そうか?……って、リンク?何処に行くんだ?もう十分だぞ。リンクが、その……逞しいのはわかったから……あの……こんなにぎゅっとされると恥ずかしい……」
「夜に夫の部屋に来て抱き上げてくれなんて、それだけで済むとでも?せっかく、お前のこと大事にしたいから毎晩抱き潰さないように部屋を分けてるのに」
「だっ……き、え?」
「え?」

 ため息混じりに伝えた言葉に、予想外の恥じらった反応。てっきり何時もの調子で笑い飛ばされると思ったら、何だこの可愛い反応。動揺して心臓がバクバクし始める。そして俺の胸に頬を寄せているナマエにはそれがバレバレで……。きゅっと俺の胸元の服を握って伏目がちのナマエが色っぽすぎる。

「や……優しくして、ね」
「ごめ……俺、優しくできない、かも」

 ベッドの上に下ろして組み敷いたら、もう止まれなかった。