ロッククライミング

 宝石を手に入れたいならイワロック狩り。
 オルディン地方に行けばもちろん希少鉱石がたくさん見つかるからそっちでももちろん良いけど、いかんせん暑い。暑いを通り越して燃える。燃えず薬を塗り込めば耐えられるけど、結局汗だくになる暑さは変わらないから、暑さに弱い私としては手頃なところで宝石を手に入れたい。
 と言うことで、プルアパッドにマークしたイワロックが潜んでいる場所の近くに来た時に、思い切ってリンクくんに言ってみた。

「リンクくん!私、ロッククライミングに挑戦してみようと思う!」

 気合い十分の私にぱちくりと目を瞬かせるリンクくん。そのリンクくんはクライムシリーズを着ていて(相変わらず肩からのラインが綺麗すぎて目の毒!左右対称の装備とか、足首のミサンガとか似合いすぎ!かっこいいっ!)ついさっきまで、切り立った崖に生えているゴーゴーダケを採取していた。
 その姿を見て、もしかしてだいぶ戦えるようになった今なら崖登りも出来るんじゃないかな?って思ったのだ。

「………急にどうしたの?」
「イワロックに登ってみたいんだよ」
「えぇっと…どうしてそういう結論に至ったのか聞いてもいい?」

 私の言葉に、リンクくんの表情が驚きから困惑に変わる。若干ジト目になっているところから「またナマエさんが何か言い出した」と思ってるんだろうけど、気にしない。

「ロマンのため」
「ん?」
「イワロックに登って希少鉱石を手に入れると言うロマンのためだよ!遠くから弓で狙うことも出来るけど、いつかはよじ登った先で直取してみたいんだよね」
「そんなことしなくてもオルディンに行けば希少鉱石を見つけられると思うよ」
「ちっちっち。わかってないなぁ。せっかく動けるようになったから自分の限界に挑戦してみたいんだよ!」
「『インドア派』って言ってたナマエさんは一体どこに………」

 ちょっと……そんな遠い目して苦笑しないでくれませんかね!ロッククライミング、元の世界でも一度は挑戦してみたいなぁって思ってたんだよ。
 ハイラルに来て体も引き締まったし、きっと今がチャンスだ!リンクくんのように垂直で凹凸も見当たらないような場所を登れるようになりたいなんて贅沢は言わない!私はイワロックによじ登れたらそれでいいのだ。
 そう思って早速崖に向かったのだけど………。

「そんなわけで、やってみます!えーっと……あれ?ここを掴んで足で支えて………あれ、うわっ!こんなキツい?!……………………助けてリンクくん。腕、プルプルして動けないっ……………」

 掴まるところまでは出来た。
 何とか地面から足を離すことも出来た。
 …………が。
 その次の一手が出せない!
 離したら間違いなく落下するー!
 何で欲張ってちょっと高いところに張りついちゃったんだ私っ!

「はいはい。仕方ないなぁナマエさんは。ぷっ……ふふ」
「くっ………笑いたきゃいっそ笑い飛ばせ!情けない姿なのは百も承知だよ!」
「あははっ。ごめんごめん。(よいしょっと)イワロックに登るのは諦めてね。そもそも多分、ダウンさせてる間によじ登って倒しきるには筋力足りないと思うよ。ナマエさんは今まで通り弓で遠くから狙うのが良いと思う。ダウンさせてくれたら俺が登るよ」

 結局、見かねたリンクくんによいしょっと後ろから持ち上げられて崖から降ろしてもらう羽目になった。くっ!情けないやら恥ずかしいやら。
 どうやら多少戦えるようになったところで、崖登りができるようになるわけではないらしい。認識が甘かったっ!

「はぁい………リンクくんは凄いよ。木登りは当たり前、垂直な崖も城壁もどんどん登って行っちゃうから、行けないところがなさそう。侵入し放題だね。忍びスーツ着てたら隠密活動もできちゃいそう。どんだけ万能なんですか君は」
「はいはい。褒め言葉として受け取っておくよ。だけど『侵入し放題』は人聞きが悪いからやめてね」

 尊敬と悔しさを混ぜてリンクくんを上目で睨んだら、ため息をついた後に、若干圧を感じる良い笑顔で両頬をうにーっと伸ばされた。何でだ。