別荘を買いました

 アッカレ地方に建設を予定している鳥望台の建設予定地を視察した後、俺たちは久しぶりにイチカラ村を訪ねた。
 最初は何もなかった村も、徐々に人が増え、少しずつ村の様子も賑やかになってきている。見晴らしの良い端の方から埋めるように、建物の数も大分増えていた。
 で、そのイチカラ村では一年と少し前からエノキダ工務店のさらなる事業発展に向けてモデルハウスの販売を開始している。俺は、以前ゼルダ姫に同行してイチカラ村に来た時に、久しぶりに会ったエノキダに「別荘として使ってみないか」と持ちかけられていた。
 俺には散々お世話になったから、と。
 破格の値段で販売してくれる、と。

「……………で、買ったんだ」
「うん。買っちゃった」
「そんな簡単に『買っちゃった』って言えるリンクくんがすごいよ………。私、今日も宿屋にお世話になるんだと思ってたんだけど。まさか別荘を購入していたとは………。ハテノ村の家を買った時もこんな感じの勢いだったの?」
「そうだね。薪の束もルピーも十分持ってたから、即決・即買い・家具付きで一括購入だったなー」
「ソウナンダ。スゴイネー」
「あれ?ダメだった?」
「ううん。凄すぎて片言になっただけ」

 プレビルドのボックスを組み合わせる工法で出来たこの家には、一通りのものが揃っている。料理鍋も家の中にあるから、雨の日も安心。従来のボックス工法では料理鍋は庭に置く形だったけど、スペースや防火設備を工夫することによって室内に設置できるようにしたらしい。
 もちろん、お風呂もあるよ!

「二階はどうなってるのかな?リンクくん、二階にあがってみてもいい?」
「うん。行ってみようか」

 トントンっと吹き抜け構造になっている階段を上がっていく。
 その先はワンフロアになっていて、階段右手は書斎スペース。左手に寝室スペースとして、それぞれデスクセットとベッドが設置されていた。書斎のデスク前にはアッカレの山々の風景を楽しめる窓。ベッド周りはあえて窓を作らず、採光のために設けられた天窓から夜には星が見えるような作りになっていた。
 このモデルハウスはまだ発展途上ということで内装のバリエーションが少ないらしいけど、将来的にはもっと広いスペースのコンテナを組み合わせた、自由設計の住宅を建てられるようにするという構想があるらしい。

「ねえリンクくん、ベッド一つしかないけど、発注ミス?」
「違うよ。一つで十分でしょ?」
「え………一緒に寝るの?」
「え………一緒に寝てくれないの?ナマエさんと一緒に寝たいなぁ(色んな意味で)」

 笑顔の俺と、無表情のナマエさん。
 しばし顔を見合わせて沈黙。
 内心にやつきそうになりながらナマエさんをじっと見つめていると、ふぃっと目を逸らされた。

「別に………いいけど」

 よし!言質とった!
 心の中でガッツポーズしてたら、少し顔の赤くなったナマエさんにじろっと睨まれた。『リンクくんのえっち』とか思ってるんだろうな。当たってるけど。
 書斎と寝室は天井から下げられた薄い布でフロアが区切られていて、その先に進むと外に出ることができる。
 外のスペースには、実は一階にあるお風呂とは別に、お湯を張れる場所を作ってもらっていた。それに気づいたのか、ナマエさんの顔がぱぁっと笑顔になる。

「もしかしてここにお湯張れたりする?」
「うん。エノキダにお願いして、露天風呂を作ってもらったんだ。ナマエさん、温泉好きでしょ?この近くには温泉ないからさ。せめて別荘に泊まる時はどうかなって。100年前のダルケルにもらった例の石、湯質が温泉になるって話だったよね。ここなら囲いを高くしてるから外からは見えないし、この建物自体、他の建物から少し離れてるから、ゆっくりできると思うよ」
「わぁぁっ!それ最高!リンクくん、ありがとう!!」

 ちょっと興奮してキラキラした笑顔になっているナマエさん、可愛い。この別荘、買って良かった。ダルケルから丁度良いものをもらえたのは想定外の幸運だった。将来、定住することになったら絶対、お風呂を充実させよう。絶対喜んでくれる。

「ねぇねぇ、リンクくん、この上はどうなってるの?」
「ああ、上は展望台。奥に階段があるから登れるよ。狭いから気をつけてね」
「うん。わかった!」

 ワクワクする気持ちが声に出てる。
 やっぱ可愛い。
 俺の語彙力、どうしようもないぐらい可愛いしか出てこない。

 展望台にはちょっとした休憩場所になってて、ベッドチェアに寝転がって空を見ることが出来るようになっている。登ってみると、先に登っていたナマエさんはさっそくベッドチェアに転がってリラックスしてた。

「あーもー幸せ〜。今日は魔物に追いかけられて散々だったからもう動きたくないー。このままだらけてたいー」
「リザルフォス大量発生だったからね。一体何が原因だったんだろう。厄災ガノンを討伐してからもう二年以上経つのに」
「んー何でだろうね」
「もしかして何か思い当たることがある?」
「……………さぁ?」
「ナマエさんって嘘つけないよね」
「ゔ………」

 言うと困ったような目で見上げてくる。

「………ごめん」
「いいよ。ナマエさんの考えがあって言えないこともあるって俺なりに理解してるから。だけど一つだけ約束して。一人で悩まないでね。ナマエさんが俺を助けてくれるように、俺もナマエさんのこと助けたいから」

 リラックスチェアに寝転がってるナマエさんの横に座ってよしよしっとナマエさんの頭を撫でると、ナマエさんが俺の腰に腕を伸ばしてすりっと擦り寄ってきた。
 そういうところにドキっとする。

「この中身までイケメンめ」
「何で怒られた?!」

 もちろん本気で怒られてるわけじゃないけど。

「リンクくん」
「何、ナマエさん?」
「好き」
「急に?!」
「………言いたくなったの」
「ナマエさん可愛い。俺も好きだよ」

 身体を屈めてちゅっとナマエさんの頭に口付ける。
 ナマエさんはちょっと恥ずかしそうにしてたけど、ふにゃぁっと照れたような幸せそうな顔になっって目を瞑る。そのうち、すぅすぅと寝息を立て始めた。大分疲れていたらしい。しばらく寝かせてあげて、起きたらお風呂に入れるようにしてあげよう。その後は、俺に食べられてもらおう。

「おやすみ、ナマエさん」

 ああ。やっぱり人の目を気にせずにゆっくり休める場所があるのはいいな。
 ナマエさんのこと甘やかせるし。
 未来のマイホームのために、もっと鉱石集めよう。
 それか、クマ狩りかな。