エピローグ

 テラコの力で無事に私とリンクくんはブレワイの世界線に戻ってくることができた。ハテノ村研究所の天辺まで登って、今、私とリンクくんはお月見をしている。
 なんでお月見? と聞かれても困るのだけど……気分です。

 久しぶりに戻ってきた世界は百年前の賑やかさは無いけれど、私たちにとっては落ち着くホームだ。
 一通りの話をした後、ゼルダ姫とプルアさんは私たちの帰還を喜んでくれて、今日はこの研究所でゆっくり休めばいいって建物一棟まるごと貸してくれた。プルアさんは今はゼルダ姫の家になってる昔のリンクくんの家で、今日はゼルダ姫と久しぶりにゆっくり過ごすそうだ。女子会だね!

 二人の話を聞く限り、実際にブレワイの世界を離れていたのやっぱり二ヶ月だけだったらしい。厄黙の世界で過ごしていたのは、どう少なく見積もっても十ヶ月以上。内、半年は私は眠っていたけど。なかなかの誤差じゃないか? それでもその「時間」は、「無かったことに」されたらしい。

 一体誰に?
 それはわからない。

 ほっとしたのは、別れ際にみんなからもらった餞別がちゃんと手元にあったことだ。勿論、リンクさんから貰っていた組紐と飾り紐も。プルアパッドのウツシエも、無事に残ってた。何か不測の事態が起きる前に、カンギスさんに絵に描いてもらおうかと思う。……何処で会えるかな。

「問題はね、リンクくん」
「うん」
「私たちがまだ調査の旅の途中で、定住してないってことだよね」
「そうだね」
「みんなから貰ったもの、リンクくんに持ってもらったままでもいい?」
「うん。構わないよ」

 私の言葉に、リンクくんはにこにこしながら言葉を返してくる。実は二人きりになってからずーっとこんな感じ。なんだかすごくご機嫌……なんで?

「なんでそんなにご機嫌なの?」
「ナマエさんを独り占めできるから」
「即答!」

 当たり前、と言わんばかりのリンクくんの素直すぎる言葉に顔が熱くなる。

「百年前の世界はみんな元気ですごく嬉しかったけど、ナマエさんを独り占めするのはなかなか難しかったから……正直、欲求不満なんだよね」
「……訓練の報酬は?」
「それでギリギリ耐えてた。だからさ、ナマエさん」
「な、何かな?」
「抱きしめてもいい?」
「っ……いいっていう前にもうしてるじゃないの……」

 座ったまま背中に腕をまわされて、ぎゅっと抱き寄せられる。首筋に顔を埋めたリンクくんのふわふわする髪の毛がくすぐったい。私もリンクくんの背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめ返す。
 そしてしばらくお互いに沈黙する。
 聞こえるのは風と、虫たちの声だけ。
 伝わってくるリンクくんの温もりと鼓動に、安心する。
 とても静かで、とても落ち着く。

「本当はさ」
「うん」
「今すぐにでもナマエさんを抱きたいんだけど」
「う、うん……」
「此処では嫌だよね?」
「うん。ヤダ(キッパリ)そういう痕跡……人様の施設に残したくない」
「だから、ぎゅーっとしようかと」
「ん。私、リンクくんとぎゅーってするの好きだよ」
「……ナマエさん可愛い」

 素直に伝えると、リンクくんにもっと強くぎゅっとされた。ここじゃたった二ヶ月だったけど、百年前の世界では半年も私のことを待っていてくれたんだもんね。
 その後私は記憶を失ってるし……目が覚めてからも我慢させてたし。

「リンクくん。色々ありがとう。私、リンクくんに助けられてばっかりだね……んっ」

 よしよしと頭を撫でると、ぱくっと首筋に噛みつかれた。何で?!

「やっぱり食べたい。今すぐ食べたい」

 かぷかぷと首筋を噛みながらリンクくんが頭をすりすりとこすりつけてくる。

「うぅ……でっかいワンコがいる……っ」
「ワンコじゃなくて狼の気分。蛮族シリーズ着たら、もっと雰囲気でるかな」
「蛮族シリーズって、あのワイルドなやつ? リンクくんが着てるの見たことないけど……ひゃっ」

 今度はペロリっと首筋を舐められてビクっとする。
 
「見たことないのに知ってるってことは、やっぱりしっかり思い出せたんだね」
「ん……まぁ、多分ね。とりあえず今のところリンクくんとの会話に支障がないから……そうなのかな」
「じゃぁ、食べていい?」
「ちょっと、リンクくん? ここでは嫌だって」
「ん。だから最後までするのは我慢するから、少しだけ俺の好きなようにさせて? 俺、だいぶ我慢できたよ? ご褒美ちょうだい」

 もう二年以上は一緒にいるのに、このリンクくんの甘えた顔には弱い……。私にしか見せない顔だから、か。改めて思うとすごく……何ていうか、照れる。

「ね、ナマエさん? 聞いてる? 聞いてないなら食べちゃうよ?」
「き、聞いてます聞いてます! ……わかった。覚悟を決めるよ。どーんときなさい!」
「……あはは。そんな、戦いに臨むように言われるとは」

 私の言葉に一瞬きょとんっとするも、心底嬉しそうにリンクくんが笑う。久しぶりに、年相応の笑顔を見せてくれた気がするなぁ。
 私が記憶を失っていた間は、何というか……どっちが年上なのかわからないぐらいしっかり見守ってくれてたからなぁ。

「じゃ、遠慮なく」
「お手柔らかにお願いします……」
「あはは。無理!」
「んんっ……!」

 かぷっとまた首筋に噛みつかれて、ちょっと本当に沸騰しそう。私……流されないでいられるかな……。ちょっと自信ない。
 とりあえず、見えるところに痕つけるのだけはやめてもらおう。

The End.