※「光の勇者の恋物語 」
※咲様からのリクエスト
※1st Anniversary Project(お題「甘」:「腹を空かせた夢喰い」様)
***
正直に言おう。テルマの酒場で俺のプロポーズをナマエが『喜んで』ってはにかみながら受け入れてくれた時、俺は文字通り天にも昇る気持ちでいっぱいになって、幸せで幸せでたまらなかった。
その幸せをお裾分けしたくてその場にいた全員に酒をご馳走して、ずーっとデレデレしてた。『もう、飲み過ぎだよ』なんて、仕方がないなぁって苦笑しながら、それでも俺に大人しく腰を抱かれてにこにこしているナマエが可愛過ぎて、酔っ払って楽しくしているみんなの視線が途切れた時に、エールの入ったジョッキで顔を隠しながら、何度もナマエにキスをした。ナマエの柔らかい唇と、これまでにだって何度もキスをしているのに、頬を赤く染めるナマエの初々しさが可愛過ぎて美味しそうで、その日の夜も送り狼になってしまった。
肌を重ねている間に照れながらも『旦那さま』って悪戯っぽく言われて……。あーっ! 可愛すぎるだろ! 俺の嫁!
そんなナマエが俺にくれる『愛情』って目に見えないものにお返しをするとしたらどんな形でできるだろう。
「なーナマエ」
「ん。どうしたのリンク」
調理場に立って夕ご飯の準備をしているナマエの後ろから腰に腕を回してぎゅっと背中に抱きつく。
今日は「はんばーぐ」って名前の料理で、ナマエが作ってくれる料理の中でも一二を争う美味いやつ。俺が大好きな料理だ。俺が「美味しい! これ好きだ!」って言ってから、度々作ってくれる。「はんばーぐ」自体はテルマの酒場でも出していて今や看板料理の一つになってるけど、俺にだけ作ってくれる「はんばーぐ」は「でみぐらすそーす」ってヤツの中で煮込んだ特別なヤツ。手が掛かるから酒場では出していないんだなんて言ってた。そんな手が掛かる料理を俺のためだけに作ってくれるのが嬉しい。「リンクには何時も元気でいて欲しいから」なんて照れくさそうに言うナマエに俺が何時もどれだけ元気を貰っているか。
腕の中にすっぽりおさまるナマエからはいつも通り良い匂いがする。飴細工のような甘い匂いに、クラクラする。その甘い匂いを堪能したくてナマエの首元に顔を埋めてクンクンしていたら「くすぐったいよ」ってクスクス笑われてしまった。
「ナマエ、好き」
「うん。私もリンクが好きだよ」
「大好きだー」
「はいはい。……どうしたの。今日はいつにも増して甘えん坊だね」
「困るか?」
「困らないよ。リンクは狼さんの時にも時々すごく甘えん坊だったもんね。最初の頃は恐る恐るって感じだったのに、慣れてきてからは頬を舐めてきたり、腕の下に頭を入れてきて『撫でろ』って目をしてきたり、擦り寄ったりしてきてたもんねー。リンクとお付き合いするようになる前に狼さんの姿でイチャイチャしてたってことがわかった時は悶絶したけど」
「す……すみませんでした」
「あはは。いーよ。ずっと、私のこと見守っていてくれてありがとう」
笑いながらぐつぐつと煮込んだソースが美味しそうな湯気をたてるフライパンを火からおろし「さて」と一呼吸おくナマエ。腕の中でくるっと俺の方に向き直り、そっと指先で俺の頬に触れてくるのを黙ったまま見ていたら、優しい笑顔でコテンっと小さく首を傾げられた。
「どうしたの、リンク。何かあった?」
「何かって言うか……」
俺の目を覗き込んでくるナマエの目はどこまでも優しくて、俺のことを心から信頼してくれているってわかる。真っ直ぐで愛しい眼差し。
「ナマエが俺に向けてくれる愛情に、どうやったらお返しできるかなって思って」
「う、うん? いきなりどうしたの」
「いきなりってわけじゃなくて、結構いつも考えてるんだけどさ。俺、気が利く方じゃないし、騎士団の手伝いがある時は平気で長い間いなくなるし、ナマエは自分のことは大体全部自分でこなすだろ?なんか俺ばっかりナマエから貰ってばっかりだから……」
「だから?」
「ナマエが俺に愛想つかさないかなって……おも……って、笑うなよー……」
「うふ……ふふっ……ごめんっ」
「ナマエー……」
なんか格好悪いぞ俺。悔しいから照れ隠しにナマエの耳を喰んだら「くすぐったいよ」ってまたクスクス笑われた。笑いながら、ぎゅっと抱きついて俺の胸元に頬を寄せてくる。その仕草にドキドキする。
「私の旦那さまになる人は格好良くて可愛いね。こんなに素敵な男(ひと)なのに、愛想尽かすわけないでしょ。私こそ、リンクがくれる愛情にどうお返ししたらいい?とりあえず頑張ってリンクの胃袋を掴もうと思ってるんだけど。どうかな?成功してる?」
「ンなの、最初っから成功してるって。とっくに胃袋掴まれてる」
「そっか。……やった」
えへへっと嬉しそうに笑うナマエはやっぱりすごく可愛くて、胸の奥がもっとドキドキして温かくなる。
「ナマエ、キスしていい?」
「うん。いいよ。……私も、リンクにキスして欲しい」
「っ! ……可愛いっ」
少しだけ目を伏せて恥じらっているところがたまらない。
「ナマエ、好きだ」
「んっ」
ナマエの頬に手を添えて、そっと唇を重ねる。柔らかくて、甘い。俺だけのナマエ。啄むように何度もキスをして、ナマエの腰を強く抱き寄せる。きゅっと、背中にまわっているナマエの手が俺の服をぎゅっと握ったのがわかった。
はぁ……っと互いに熱い吐息を交わして少しだけ顔を離したら、トロンっと潤んだ瞳になって頬を赤く染めたナマエと目があう。
その薄茶色の目をじっと覗き込めば、ナマエの目に写っているのは俺だけ。それがたまらなく嬉しい。たまらなく、愛しい。
「ナマエが俺の嫁になってくれるのが嬉しい。俺のために料理を作ってくれるのが嬉しい。可愛い笑顔を見せてくれるのが嬉しい。一生懸命なところも、素直に気持ちを伝えてくれるのも、あと、結構エロいところも」
「ち、ちょっとリンク?」
「俺はあんまり賢くないから、思ってることを素直に伝える。そんで、ナマエのこと一生大切にする。何があってもナマエのこと護る。ナマエは俺の宝物だ。ナマエには、ずっと笑っていて欲しい。………ナマエ?」
何とか俺の気持ちをナマエに伝えたくて、頭の中に浮かんだことからどんどん素直に口に出していたら、真っ赤になってパクパク口を開けたり閉じたりしていたナマエから力が抜けてくたりっと俺の方にもたれかかってきた。
「どうした、ナマエ?大丈夫か?」
「だ……大丈夫……ちょっと、リンクのイケメンオーラと甘々な言葉にヤラれただけだから」
「そうか? 伝わった? 俺がどれだけナマエに惚れてるか伝わったか?」
「伝わった! 伝わったよ! だから至近距離でその整った顔で満面の笑みにならないで〜! もう、お腹いっぱいだからっ!」
「そっか。伝わったかー。良かった。へへ。大好きだぞーナマエー」
「り……リンクが私の心臓を止めにきてるっ」
力の抜けたままぷるぷるしているナマエがまた可愛過ぎてきゅんとする。
「ナマエの心臓が止まるのは困るけど、ナマエのことが大好きで愛してるってのはこれからも伝えていきたいって思ってるんだ。これからもよろしくな!ナマエ!」
にかっと笑ってぎゅっと抱きしめたら、ナマエも「うん」って頷きながらぎゅっと抱きしめ返してくれた。耳の先まで真っ赤になってるのがやっぱり可愛すぎて……!
もう俺、本当にすげー幸せ。この幸せは、ナマエがくれたものだ。ナマエがくれるこの幸せを、何倍にもしてナマエに返せるように、これからもずっとずっとナマエのことを大事にしていくな!
***
2024.06.23 公開
「三倍返し」はホワイトデーからきたものらしいとネットサーチで知ったのですが、物語の中では光の勇者目線で夢主からの愛情に応えたい!と思っているところを書いてみました。夢主大好きが溢れ出て止まらない光の勇者。尻尾をぶんぶん振って懐きまくってる幻が見えます。(笑)
咲様、リクエストありがとうございました!