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 リンクくんと一緒にお風呂に入って、そのままの流れで初めて身体を重ねたら見事に意識を飛ばしました。あああ……。だって激しかったんだもん……。
 目を覚ましたらリンクくんの裸のままの上半身が目の前に飛び込んできて頭が沸騰しそうになった。私……リンクくんとシタんだ。こんな美人で強くて格好良いのに可愛いハイラルの勇者と。かぁぁっと顔に熱が集まって思わずぎゅっと目を瞑る。深呼吸だ私!落ち着けっ!
 ふぅぅっと細く息を吐いて何度か深呼吸してから再び目を開けて目の前のリンクくんの胸元に顔を寄せる。トクントクンっと鼓動が聞こえる。生きてる音。それを聞いているうちに少しずつ落ち着いてきた。
 規則正しく上下する胸元に、ちらっと上を見上げたら穏やかな表情で目を瞑っているリンクくんの顔があって、部屋の明るさを考えると何時もならとっくに起きているはずなのに、今日はまだぐっすり眠っているみたいだ。
 胸元から離れてそっとリンクくんの頬にかかっている髪を指先で掬っても目を覚まさない。……わけないよね。

「リンクくん寝たふりしてるでしょ」
「………バレた」

 くすくすと笑いながら言ったら、少しバツの悪そうな顔をしたリンクくんの目がぱちっと開いた。透き通るような空色の瞳と視線が合う。私が大好きな空色の瞳。その瞳に自分だけが映っているのが嬉しい。

「珍しいね。リンクくんが明るくなってもまだベッドにいるなんて」
「……」
「どうしたの?」
「……もう、大丈夫?」
「え、……何が?」

 心底心配そうに聞かれた理由がさっぱりわからなくてキョトンっとしてしまう。そうしたら、横になったままリンクくんに腰を引き寄せられてぎゅっと強く抱きしめられた。

「……三日」
「ん?」
「この三日間、ずっと眠ってたんだよ。ナマエさん」
「え……嘘、意識飛ばしちゃったのって昨日の夜の話じゃないの?」
「嘘じゃないよ。今日はナマエさんが意識を飛ばした夜から数えて三日目の夜が明けたところ。……本当に壊してしまったかと思った。目を覚まさない間、熱を出してたし。うなされてた。もしかしてまた古代ハイラルに時渡りしているのかと思ってキスしても目を覚ましてくれなくて……俺……ごめん……加減できなくて……」
「リンクくん……」

 ぎゅっと私を抱きしめる腕の強さからリンクくんの言っていることが本当のことなんだってわかった。三日……三日も目を覚まさなかったの私?どれだけ寝坊してるの!……そりゃぁリンクくんが心配するわけだ。いくらリンクくんとの……その……アレが激しかったからって三日も目を覚まさないなんてことがある?しかも熱を出してうなされてたって?身体の調子を考えてもそんなことになってたなんて全然わからない。むしろ意識を飛ばす前よりも身体が軽くて絶好調と言っても過言ではないぐらいなんだけど。

「ごめんね。心配かけちゃって」
「ううん。俺の方こそごめん。ナマエさんを抱けたのが嬉しくて気持ち良すぎて、我慢できなかった。……その……これからは何とか我慢するから、俺のこと嫌わないで」
「え……」
「ナマエさんを抱きたくても我慢するから。触れてるとどうしても欲しくなってしまうから、なるべく触れないようにするから……」

 声音だけで悲壮感が伝わってくる。
 私を抱きしめていた腕の力がゆるんで、リンクくんが少しだけ身体を離す。密着していた身体の間にできた隙間に流れ込む空気が冷たい。それがすごく寂しくて、リンクくんの肩を掴んで気がついたら私からリンクくんに身体を寄せていた。

「やだっ、困るよ!」
「え……?」

 そんな、確かに手加減無しで抱いた相手が三日も目を覚まさなかったら心配になってしまうだろうけど、だからって我慢されたら私が困る!だって……だって……!

「……私、リンクくんにまた抱いてほしい」
「でも……」
「やだ!我慢したりしないで私のこと欲しがって!私はリンクくんのことが欲しい。リンクくんに触れて欲しい。……こんなに思うぐらい好きにさせておいて酷いよっ……!」

 あぁ……ダメだ。
 感情が昂っちゃってる。
 目頭が熱くなって涙が出てきた。

「私とのえっち、本当は気持ち良くなかった?私のこと、嫌になっちゃった……?」
「そんなわけないでしょ!」
「じゃあ我慢も遠慮もしないでよ!」
「だって、ナマエさんの身体が心配で……」
「心配をかけてしまったのは悪かったなって思うけど、熱を出してただけでしょ?でも私、高熱を出してたって思えないぐらい今すごく身体の調子が良いの。だから大丈夫だよ。壊れたりなんてしない。……リンクくんと一緒にいるから……これまでみたいにたくさん触れてほしい。……だめ?」
「〜〜〜っ!」

 とどめに上目遣いでリンクくんの空色の瞳を覗き込んで訴えたら、見る間に耳の先まで真っ赤になっていくリンクくん。
 喜んでる。喜んでるよね?だって耳先がぴくって反応したもの。手の甲で口元を隠して視線を逸らすのも、照れ臭さがマックスになってるからでしょう?
 よし!もうひと押しだ!

「私ともっとたくさん気持ちイイことして?」
「っ……!」

 口元を隠すリンクくんの手をやんわりと退かし、顔を寄せてリンクくんの唇を喰むように口付けて返答を待つ。そうしたら、つーっとリンクくんの鼻から赤いもの……鼻血が垂れてきた。あらー……っと思って見ていたら、本人も気付いたのか慌てて鼻を押さえて、そして真っ赤な顔で咎めるような目で見られた。

「ナマエさん」
「はぁい……(すごい鼻声)」
「そんな可愛いおねだりは反則だと思う」
「鼻血出しちゃうぐらい?」
「鼻血出しちゃうぐらい!」
「……とりあえず血が止まるまで安静にしてようか」
「血が止まったら覚えてろ。せっかく我慢しようって決めたのに!」
「だから我慢されると私が困るの!リンクくんのことたくさん欲しくなっちゃうぐらい好きになっちゃったの。……えっちも……すっごく気持ち良かったし……あ、あれ……リンクくん!指の間からも血が溢れてるよっ!出血多量だよ!」
「誰のせいだっ!」
「ご、ごめん……」

 結局リンクくんの鼻血事件でわちゃわちゃしちゃって我慢するとかしないとかそういうのはもういちいち気にしないで良いってことで後ほど話がついた。
 私への我慢も遠慮もいらない。その代わり私も我慢しないから。欲しくなったら私から襲っちゃうかもよ?ってニヤリとしたら、また鼻血を出しそうな勢いで真っ赤になってこくこく頷いてた。はぁ……可愛い。私、これまでお付き合いしてきた恋人に対してこんな可愛い可愛いって思うこと今までなかったよ……新しい扉を開いてしまったなぁ……。
 それもこれもリンクくんが美人で可愛いのが悪い!

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2024.09.18 先行公開
2024.09.23 本公開