03

 一通りの準備を終えてリンクに声をかけたらまずはシドを探そうということになった。
 私が準備をしている間に里内を散歩していたリンクによると、里内でシドを見かけることはなかったらしい。おそらく里の外にいるのだろうとあたりをつけたリンクに探してもらったら、お願いをしてしばらくしてからワープで里に戻ってきたリンクに東の貯水湖でシドに待ってもらっていると告げられ、何とかリンクに助けてもらいながら山登りをして貯水湖まで辿り着くことができた。頑張ったよ私! リトの村に滞在している間に階段の上り下りを頑張って、足腰と心肺機能を鍛えておいた甲斐があった! リンク一人なら雷獣山の頂上から貯水湖に向かってパラセールで飛ぶこともできるのだろうけど、私にその選択肢はない。

 ムリムリムリ。

 おんぶ状態で落下防止のためにハーネスよろしく紐で縛ってもらえばいいって?

 ムリムリムリ。

 そんないろんな意味で死にそうな状況は断固拒否する。

 そんなわけで、リンクが戻ってきてからも準備と移動に時間がかかったものの、ゾーラの里一……いや、何ならブレワイに出てくる主要キャラクター一熱い男、ゾーラ族のプリンスであるシドは貯水湖でちゃんと待っていてくれた。

「君がリンクの専属料理人のナマエか! オレはシド! ゾーラ族の王子(プリンス)だ!(キランッ)」

 おお……生『キランッ』頂きました!

「ナマエと申します。申し訳ありません、王子様をお待たせしてしまって。よろしくお願いします」
「はっはっは。槍の鍛錬をしていたから問題ないゾ。それに、そう畏まらなくてもいい。リンクの専属料理人ならオレにとっても友同然。俺のことは『シド』と呼んでもらってかまわないし、普段リンクと話しているのと同じように話してくれ」
「ああ。わかった。堅苦しいのが苦手だから助かるよ。よろしくな、シド」
「ああ!」
「ただ俺、人と目線を合わせるのが苦手で……今すげー頑張ってんだけど、目を見ずに話しても不敬にならないか?」
「はっはっは! そんなこと、全く問題ないゾ! リンクからも事前に聞いていたしな!」
「そっか。ありがとう、リンク」
「どういたしまして」

 画面越しに見ていた熱い王子は、生身で対面してもやっぱり熱い男だった。むしろ生身だからこそよりその熱さが伝わってきた。そしてデカい。リンクがハイリア人の中でも小柄なほうだから余計にかもしれないけど、デカい。モチーフはやっぱりサメなのかな? 思ってたより凄く鮮やかな赤だ。
 あ、首元のホイッスル、あれはミファーから貰ったやつだっけ?
 すごくピカピカ。大事にしてるんだねぇ。

「ナマエ、見過ぎ」
「え」

 まじまじと見ていたら、リンクに渋い顔をされた。
 あ、もしかして『熱い視線』で観察してた?
 初対面でそれは失礼だったね。いかんいかん。

「悪い。ゾーラ族の人と会う機会が今までなかったからつい……」
「はっはっは。かまわないゾ。気にするな!」
「寛大な王子で良かったよ。ところでシド、俺がリンクにここまで連れてきてもらったのには訳があるんだ」
「ふむ。聞こう」
「実は俺、ミファー姫に俺の作ったパンケーキを食べてもらいたくて」
「ミファー姉さんに『ぱんけーき』を食べさせる? だが姉さんは……」
「その辺のところはわかってる。けど、リトの村で英傑リーバルの魂に会って、実際に俺の料理を食べてもらったんだ。だから、ミファー姫にも食べてもらえるんじゃないかって思って。ほら、飯を一緒に食うって、何か気持ちが落ち着くだろ? 百年もの間、神獣の中で囚われていた英傑たちに、俺なりに何か気持ちが安らぐようなことをできないかなって考えたんだ」
「そうか。この話、父上には?」
「ドレファン王には話した。それで、ミファー姫に料理を振る舞うことについて快く許可していただいたよ」
「……そうか。ならばオレから言うことは何もないゾ! 姉さんのために是非ともその『ぱんけーき』というものを作ってほしい! ……ところで、どんな食べ物なんだ?」
「タバンタ小麦をベースに作った少し甘味のある生地を薄く焼いたもので、俺はそれにホイップクリームやフルーツを盛り付けたものを作ろうとしてるんだ。パンケーキそのものは、ケーキよりはしっかりした生地で、クレープよりは分厚い生地のスイーツだ」

 パンケーキというものがハイラルに存在していないことはないだろうけど、いまいちこの世界の料理のバリエーションがどうなってるのかわからないんだよね。だからパンケーキなるものがどんなものなのかを説明したところ、シドじゃなくて隣で話を聞いていたリンクのほうが少し前のめり気味に会話に入ってきた。

「へぇ……美味しそうだね。どんなフルーツを使うの?」
「ええっと、イチゴ、ひんやりメロン、ビリビリフルーツ、ツルギバナナ、リンゴだ」
「材料を聞くだけだと『山盛煮込み果実』と同じだね」
「フルーツだけならな。あくまでメインはパンケーキだ。なかなか食べ応えがあると思う」
「何故だかお腹が減ってきた気がするゾ!」
「そうだね。俺もお腹が空いてきた」

 どこかワクワクした目で見てくるリンクとシド。二人とも食いしん坊か!

「はは。良い反応だな! じゃ、食べてもらおうか」
「?」
「リンクからシドにもミファー姫に振る舞うものを食べさせてほしいと言われたんだけど、シドに振る舞ってる時に絶対リンクも食いたいってなるだろうと思って、ちゃんと二人分の材料を用意しておいた」
「本当⁉︎ やった!」
「おお! 良かったな! リンク!」
「ああ!」

 お互いにすごく良い笑顔で笑い合うリンクとシド。
 二人の間の友情シーンを頂きました!
 それだけでお腹いっぱいだなーなんて思いながら、さっそく準備しようと貯水湖に設置された東屋……って呼べばいいのかな? とりあえずベッドが置かれている建物を確認する。うん。カウンターテーブルに椅子もあるし、ちょうど良い感じだ。

「よし。それじゃぁ、始めさせてもらうな!」